移住者は50人超え。人口1500人の町・金谷と日本全国の若者を繋ぐ場“まるも”とは
2014年に安倍総理の総理大臣記者会見にて発表された“地方創生”。
“各地域がそれぞれの特徴を活かした、自律的で持続的な社会を創生することを目指す”この政策は、施行されてから早4年が経とうとしています。
この4年の間、様々な地域で自治体を中心とした移住促進活動が行われてきましたが、思うように結果が出ていない地域も多いのではないでしょうか。
そんな中、20代〜30代の若者が続々と移住している町があります。その名も、千葉県富津市金谷。
人口1560人・35歳未満の男女は全体の約20%しかいない(※2010年時点)というこの町に、何故若者は集まるのでしょうか。
今回は、金谷に移住してきた若者たちが集まる場となっている、コワーキングコミュニティまるもについて紹介します。
コワーキングコミュニティまるもが生まれた背景
コワーキングコミュニティまるもの始まりは、2015年10月。
元々「まるもストア」という名前のスーパーマーケットだった建物を、KANAYA BASEという団体が改装し、アーティスト活動を行う方たちへのシェアアトリエとして活用していました。
この頃から若者が集まり、地域の人々と各地の若者が交流する場となっていましたが、KANAYA BASEが閉鎖されることに。
そこで、「10年前から地域活性に取り組んでいるこの土地で、KANAYA BASEの閉鎖に伴い金谷の若者が減っていくのは勿体無い」と思い、スペースの運営を引き継ぐことになったのが、現まるもオーナーの山口拓也氏です。
2014年より金谷でWebサイトの制作やWebメディアの運用・制作をメイン事業とする株式会社ponnufを経営していた山口氏は、これを機にponnufの事業の一貫としてコワーキングコミュニティまるもを運営することを決意。
その後、オープン〜2018年6月の間にまるもがきっかけで金谷へ移住した人は50人を超えました。
一体、まるもとはどのような場所なのでしょうか。
若者が集まるのは何故?まるもで具体的に行われていること
現在のまるもは、仕事をする場所、仕事を学ぶ場所、地域の人々や全国の若者が出会う場所として、様々な用途で活用されています。
具体的には以下のように。
①コワーキングスペース
フリーランスで働く人々を中心に、仕事をする作業スペースとして利用されています。
1日利用:2,000円
月額利用:①6,000円(9〜17時の間、毎日利用可能)
②8,000円(9〜17時はもちろん、それ以外の時間でも毎日利用可能。
コーヒー1日1杯無料、キッチンスペースの利用可能など様々な特典有り。)
1日利用に比べ、月額利用の方が遥かにお得であることから、移住者を中心月額会員となる方が多数。
毎日顔を合わせる利用者が多いため利用者同士の交流も盛んに行われ、それをきっかけに新たな仕事が生まれることも頻繁に起きています。
②イベントスペース
webを中心とした業界で著名な方にお越しいただき、仕事のスキルアップを狙うセミナーを開いたり、新たな移住者を歓迎する交流会を開いたりと、様々なイベントが開催されています。
1〜2週間に1度はイベントが行われており、「まるもに行くと面白い人に出会える」「今後の役に立つ情報交換ができる」と、遠方から足を運ぶお客さんも珍しくありません。
③田舎フリーランス養成講座
地方で独立することを支援する、移住型の体験プログラムを実施しています。
ponnufが運営するシェアハウスに1ヶ月間滞在しながら、WEBデザインやライティング、サイト制作などWEBのスキルを中心に、フリーランスとして独立するためのノウハウを学ぶことができます。
講師陣は、現役のフリーライターやWEBデザイナーなど。業務を遂行するための作業スキルだけでなく、フリーランスとして稼ぐための具体的な方法も学ぶことができるので、講座終了後すぐにフリーランスとしてデビューする方もたくさんいます。
また、講座をきっかけに田舎暮らしが気に入り、その後本格的に移住する受講生や講師の方々も少なくありません。
まるもで始まった田舎フリーランス養成講座ですが、「好きな場所でやりたいことをやりながら生きていきたい」という若者の背中を押すだけでなく、移住促進にも繋がっていることから、現在では千葉県いすみ市や山梨県都留市、石川県能登町など、全国の様々な地域で開催されています。
④企業の開発合宿
まるもの作業スペースを活用した、企業の開発合宿の受け入れも行なっています。
「いつもと違う環境で、リフレッシュしながら集中して会議を行いたい」と考える都内の企業に人気のサービスで、ponnnufが運営するインキュベーションキャンプ『void』や、提携している近隣の旅館へ宿泊することができます。
都内の会社員の方々が、金谷という地域やまるもについて知るきっかけとなっています。
⑤シェアハウス
2階建である、まるも。
1階はコミュニティスペースとして開放されていますが、2階はシェアハウスとして活用されています。
メインとなる住人は移住者であり、そのほとんどが1階のコミュニティスペースで各々の仕事を行なっています。田舎フリーランス養成講座開催時には受講生が住むこともあり、移住者と受講生が交流する場としても大きな役割を果たしています。
また、シェアハウスの住人とまるも月額会員(8,000円のコース)の利用するキッチンが同じであることから、食事をきっかけに両者の会話が生まれることも。
1つのスペースを様々なコミュニティで共有することで、日々新たな出会いが生まれています。
※上記以外でも、ponnufではまるもを活用した新たなサービス・事業を日々立ち上げています。
「仕事」「住まい」「コミュニティ」の3つを満たす、コワーキングコミュニティまるも
移住促進のキーになると言われている、「仕事」「住まい」「コミュニティ」の3つの柱。多くの若者が金谷へ移住する理由として、まるもにはこの3つが揃っているということが挙げられるでしょう。
スキルアップを図ったり、横の繋がりを作ることができる(仕事)
「移住者への仕事支援」に前向きに取り組んでいる地域は多々ありますが、地方にある仕事は業界や職種が限られていたり、都会で働いていたキャリアを活かせなかったり、フリーランスとして仕事を持ち込んでも横の繋がりができにくかったりと、問題は山積みです。
その点、金谷では既にフリーランスとして仕事をしている人がまるもを利用することで、集中できる作業スペースを確保できるだけでなく、利用者同士の交流を通して新たな仕事を受注することができます。
また、地方で独立するスキルがない人でも、田舎フリーランス養成講座を受講し、独立への1歩を踏み出すことができます。
気軽にお試し移住ができる(住まい)
いきなり「定住してください」と言われても、住んだことがない地域にこの先一生住むかどうか、決断できる人はなかなかいません。
しかし、まるもでは田舎フリーランス養成講座を通じて1ヶ月間現地に滞在することができたり、初期費用のかからないシェアハウスに数ヶ月間お試しで住むことができたり、イベントをきっかけに旅行気分で数日間滞在することができたりと、お試し移住をする機会がたくさんあります。
それらを通して金谷の暮らしが気に入り、数週間の滞在が数ヶ月に、数ヶ月の滞在が数年になり、結果的に長期移住へと繋がることも珍しくありません。まずは関係人口を増やすことで、長期移住へと繋げる仕組みができているのです。
また、まるもには、徒歩圏にスーパーやコンビニ、飲食店などが揃っており、車がなくても生活に困らないという特徴があります。都会から訪れる若者は、車を持っていない人がほとんど。
車を購入しなくても快適な生活を送ることができるため、お試しで移住するのにちょうど良い環境だと言えます。
知り合いがいなくても、住民と交流しやすい(コミュニティ)
「田舎に行って、地域の人と馴染めなかったらどうしよう」という不安は、移住を検討している多くの人が抱くもの。
まるもでは頻繁にイベントを行なっているため、それをきっかけに地域の人や既に移住している先輩移住者と交流することができ、比較的コミュニティに馴染みやすい環境が整っています。
また、シェアハウスの運営も行なっているため、生活を共にすることで自然にシェアメイトとのコミュニケーションが生まれ、一緒にご飯を食べたり、買い物へ出かけたりと、プライベートの時間を共有する機会が多くあります。
住民同士のコミュニケーションが増えることで、バスケットサークルが作られたり、ランチ会やディナー会が開かれたりと、日々新たなコミュニティやイベントが生まれています。
もし気の合わないコミュニティがあったとしても、他のコミュニティに参加すれば良いだけなので、狭い人間関係に悩む必要がありません。
人が集まる場・コミュニティを作り、関係人口づくりから始めよう
金谷の移住促進において、大きな役割を果たしている、コワーキングコミュニティまるも。
その理由は、まるもには「仕事」「住まい」「コミュニティ」の3つの柱が揃っていること、イベントや講座などが頻繁に開かれ、人の流動性が高く、新規の方でも気軽に訪れやすいことなどが挙げられます。
移住促進に悩む地域の方々は、いきなり定住者を増やそうとするのではなく、まずは地域の人・外部の人が気軽に集まることができる場づくり・コミュニティづくりから始め、関係人口を増やすことを意識してみてはいかがでしょうか。